森林浴、森林セラピーの始まり
「森林浴」という言葉は、1982年に日本の林野庁が提唱しました。その年の秋、初の全国大会が赤沢自然休養林で開催されたことから、この森が森林浴発祥の地と呼ばれています。当時の林野庁長官・秋山智英氏の直筆掛軸が上松町に所蔵されています。
森林浴が提唱された当時から、森林の環境や空気に満ちるフィトンチッドの効果により、人々がリフレッシュ感を得られることが分かっていました。森林浴は森を歩くレジャーとして日本国内に定着して行きましたが、この森林浴が健康増進の手段として注目されたのが、2000年代のことです。
日本の企業にもパソコンによるIT産業が導入された頃、労働者の心身の健康にストレスから生じる疾患が顕著になってきたのです。このストレスを軽減するための対策として、森林浴のリラックス効果が注目されました。
官民学連携のチームにより、森林の健康増進効果を測定する方法がデザインされ、日本各地の森林で都市部と比較する生理実験が実施されました。現在の日本国内で、都市と比べストレスの軽減やリラックスが実証された森林セラピー基地やセラピーロードはおよそ60箇所にのぼります。
森林浴がエビデンスを得て森林セラピーに発展すると、予防医療に熱心な欧米で注目を集めるようになりました。日本と異なり皆保険制度が整備されていない国では、病気にならないための医療に関心が高いのです。日本から発信された論文は瞬く間に広がり、研究者の著書は海外でベストセラーになっています。
その際、出版社から「森林浴という発音の響きが、東洋の神秘的な文化を体現している」と喜ばれ、森林セラピーの効果も「Shinrin-yoku」として紹介されたことから、海外では、森林浴と森林セラピーが同義語として解釈されるようになりました。
赤沢自然休養林を核にした森林セラピー事業では、長野県立病院機構の木曽病院が全面的に協力して下さっています。また森林セラピー基地認定調査チーム、日本医科大学、森林浴の健康増進等に関する調査研究委員会によるエビデンス調査が実施されており、様々な健康増進効果が明らかになってきました。
それぞれ、次のページからご参照ください。
県立木曽病院との連携
森林浴のエビデンス
森林浴で健康の恩恵を受けるには、五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)をフルに活用して自然との一体感を高め、爽快感やリラックス感を得ることが大切です。うっそうと茂った暗い森よりも、明るく整備され滞在に適した森がオススメ。また樹種によって景観や森の香りも異なるため、様々な森林から好みの場所を選ぶ楽しみもあります。
ぜひ、ご自身のパートナーになり得る森林を探し、心身ともにリフレッシュして下さい。