森林セラピーや森林浴が人々の健康に役立つのには理由があります。それは、我々人類の進化と生活環境の変化によるものです。

「数百万年を自然環境で過ごしてきた我々人類にとって、産業革命以降の都市生活による200年は、都市環境に適応するにはあまりに短すぎる。人類が本来生活していた自然の中に身を置くことで森が快適だと感じるとストレスが軽減され、ヒトが本来持っている健康を引き出すことができる」とは、森林セラピー基地認定調査に携わってくださった宮崎良文先生(千葉大学)のコメントです。

日々のデスクワークや車・電車の利用で衰えた足には、不整地を歩く森林散策が良いトレーニングになります。また森林に滞在することで感覚(五感)が研ぎ澄まされると、心のあり方も変化します。森林を訪れた際、これらの健康増進メニューを導くのが、同行する森林セラピストや森林セラピーガイドの役割になります。

森林に出かける前に、まず森林がどのような健康増進効果をもたらすのか、ご紹介します。


森林セラピー基地認定調査による、エビデンス

 

(画像提供:森林総合研究所)

森林セラピー基地やセラピーロードの認定実験では、都市と森林に被験者を分けて生理調査を実施、翌日に被験者を入れ替えて生理調査を実施する手法が採用されました。午前はそれぞれの環境を歩き、午後は座観(座って風景を眺める)を行いました。それぞれの体験の前後で、主観的な心理状態や血圧、心拍のゆらぎ、反応速度やストレスホルモンの指標となる消化酵素などを調べます。

森林総合研究所の調査の結果、森林内ではポジティブな心理状態になること、ストレスホルモンの分泌量が低下することが判明。都市部と比較して、リラックス効果が顕著になることが判明しました。

この結果により、赤沢自然休養林は第1期森林セラピー基地に認定されました。


日本医科大学の特別実験による、エビデンス

森林セラピー基地認定実験の翌年、日本医科大学のチームによる特別実験が実施されました。

 

(画像提供:日本医科大学)

森林セラピー基地認定実験ではリラックス効果の検証に重点を置いているため、ストレスの原因になりかねない採血や採尿は敢えて実施されていません。日本医科大学の実験は採血採尿も実施し、実際に人体にどのような改善効果があるのかを調べるものです。

東京都内から選抜された「お疲れサラリーマン」12名が、都市と森林へそれぞれ2泊3日の旅行に出かけ、前後の健康状態を、特に健康的な生活に大切な免疫機能の変化を調査しました。

その結果、都市から都市への旅行では変化が見られなかった免疫機能が、森林への旅行を体験すると5割前後向上し、しかもその効果が4週間後まで2割程度継続していることが判明。指標とした免疫機能が抗がんタンパク質によるNK細胞だったため、現代人の死因1位となっているがん対策にも期待を示すものでした。またアドレナリンなどストレスの指標も低下しており、森林セラピー基地認定実験の結果を追認することができました。

この結果は海外でも論文発表され、大きな話題となりました。

研究チームも日本衛生学会内に森林医学研究会を設置、現在まで調査を続けています。


森林浴の健康増進等に関する調査研究委員会による、エビデンス

森林セラピーや森林浴の効果が明らかになり、世界的に健康増進への活用が期待されていることから、森林セラピー専門医の育成に携わった専門家、INFOM(国際自然・森林医学会)、千葉大学・日本医科大学・県立木曽病院らが合同で研究を進めることとなりました。(公財)車両競技公益資金記念財団が支援し、2013年から各種研究を進めています。

上松町はフィールド提供と滞在の受入手配を担当するため、委員として参加しています。

これらの研究も、都市と森林の滞在により、人々の健康指標を比較する調査を中心としています。

2013年〜2015年は、中高年の男女による血液や血圧、循環器系の調査を実施。

2016年〜2018年は、千葉大学において森林の映像・香りなどの要素がもたらす反応や神経系の調査を実施。

2019年以降は、ホルモンなど内分泌系の調査を進めています。

新型コロナウィルスの蔓延により2020年より調査が中断していますが、2019年の調査では、森林内でセロトニンの分泌が有意に上昇することが判明しました。これにより現代人のメンタルヘルスにも効果が期待されます。

また2021年は新型コロナウィルスのため、越県を伴わない東京都内の森林部と都市において、感染症に対する粘膜免疫の調査を実施予定です。

研究論文の多くは英語で発表されています。INFOM日本支部のサイトをご参照ください。


森林サービス産業モデル地域事業による、エビデンス

2020年、林野庁が進める森林サービス産業の健康部門で、赤沢自然休養林をモデル地域としたモニターツアーが実施されました。

今回の被験者は、働き盛りの社員を擁する地元企業・上松電子株式会社様にご協力をいただきました。4〜5名の班編成で計29名が1週間の生理データを収集、真ん中の休日で森林セラピーメニューを体験し、スマートウォッチなどを用いて前後の健康指標を比較しました。また期間中の前後で、アテネ不眠尺度、POMS、ROS回復感指標の主観評価を実施しました。

調査結果は森林サービス産業による倫理委員会の監修を受けています。

 

1班が台風のため調査中止となってしまいましたが、25名の結果から、不眠症の自覚症状の減少、総睡眠時間や深い睡眠時間の増加が見られ、睡眠の質の向上が明らかになりました。また回復感の指標や主観評価も改善され、社会人のメンタルヘルスに効果が期待されます。

森林滞在により、心の回復感が向上しました。

森林滞在により、不眠の自覚症状が軽減しました。

実際に眠りの時間を測定すると、総睡眠時間と深い眠りの時間に増加がみられました。

 

上松町では、このモニターツアーで得られた結果を県立木曽病院の協力により電子カルテ化し、企業の皆様に向けて提供できるよう事業を進めました。

メニュー詳細はこちらから。お問い合わせは上松町観光協会までお寄せください。

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